姿勢を開くと心も開く
訪問介護の仕事で椅子に腰かけて話すときには、手のひらを上に向けて広げ、膝もリラックスさせて少し広げるとよいだろう。つまり、面接試験の逆である。脇を締めて膝も閉じて、手のひらを膝にあてた姿勢は、引き締まった印象になり、そのぶん緊張感を与えて相手を疲れさせるのだ。特に認知症の高齢者などは相手の雰囲気に敏感なため、何か危ないものを持っているかもしれないと警戒して心を閉じてしまうのである。手のひらを見せるというのは、「わたしは何も持っていません」あるいは、「手のうちを見せる」ということで、敵意がない、というメッセージなのだ。仏像も手のひらを見せて、相手を優しく迎え入れている。訪問介護の仕事で大事なことは、まず介護者自身がリラックスして、そのほぐれた雰囲気を相手に伝えるということだ。高齢者と話をするときは、どんな位置をとるかも大切である。介護を始めたばかりの高齢者の警戒心が、介護者との「位置関係」が原因のこともある。位置のとり方によって、相手の気持ちは大きく変わってくるのだ。真正面は、いちばん印象の強い位置である。お互いが逃げも隠れもできない、かなり緊張した位置関係とも言える。だから、初めて出会った高齢者には真正面からジッと向かい合わないほうがいいだろう。かなりメッセージが強いので、話しかけられた高齢者に威圧感を与えてしまう。ただし、大事な話をしたいのに、聞こえないフリで聞いてくれない高齢者には、ここぞというときに、思い切って正面から目を見つめて話しかけるとよい。このようにいろんなテクニックを使い利用者との距離を縮めていくことが大切である。利用者一人一人に密接した仕事である訪問介護は自身の成長につながる仕事であるといえる。